冬森万砂子(33歳婚活中OL・大阪市内在住)はH庫県某市の出身だが、彼女の実家の周辺は今でこそ新興住宅地であるがかつては一面に田畑が広がる農村だった。
最近になって開発が進んでいる理由は、冬森家を含む地元の土地持ち農家が土地を売却したりマンション経営を始めたりしたからだ。
冬森家の場合は万砂子の祖父の代にすでに離農しており、結果として数ヘクタールの農地を遊ばせていたが、バブル時代に万砂子の父がこれらの土地の大部分を売却して儲けたのだった。
このため、万砂子と姉の沙名子は地元では「資産家のお嬢さん」で通っており、それなりに良い教育をうけることができた。
姉の沙名子は大阪府下のいわゆるお嬢様短大を卒業し、妹の万砂子は割と勉強ができたので旧帝大を卒業した。
姉妹が就活年齢に達した時期はちょうどバブル崩壊後の氷河期と重なっていたが、姉妹ともに父のコネで正社員として就職することができた。
そのため沙名子も万砂子も、一生父親に足を向けて寝ることはできないと感じている。
さて万砂子の学生時代において、テレビを騒がせていたのは「援助交際」「ガングロ」「ドラッグ」などといった言葉だった。
しかしこうした言葉は万砂子がいた地域では遠い世界の異国言葉でしかなかった。
何せ幼稚園児同士の喧嘩でさえ近所の噂話の種になるほどのド田舎(当時)である。
地元随一の名士でもある国会議員Qの家を中心に緊密にまとまった集落なので、住民はほぼ全員が顔見知り。
万砂子の出身高校(公立校)にも不良がいなかったわけではないが、何か悪さをしようものなら瞬時に井戸端会議にネタになるのがオチだった。
従って、万砂子もその姉も客観的に見れば品行方正な高校時代を送ったものだった。
その後姉妹ともに大学進学とともに大阪に出たため多少遊んだしアルバイトもしたが、基本的には勉強に追われて遊び回る暇もなかったのだった。
しかし結婚した今では、万砂子のこうした「お堅い」生育環境が婚活において大きなプラスになったという事実を否応なく認識させられている。
結局、婚活市場というものは知力・体力・財力そして時の運を総動員した婿狩り活動でしかないのだろうか?